日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
原著
高齢者市中肺炎の重症度分類と予後予測
樋口 多恵子太田 求磨田邊 嘉也鈴木 栄一下条 文武
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2007 年 44 巻 4 号 p. 483-489

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抄録

目的:高齢者市中肺炎における日本呼吸器学会成人市中肺炎診療ガイドラインの重症度判定(A-DROP)及びPORTコホート研究による予測基準(PSI)の予後予測精度を比較検討した.方法:過去2年間に高齢者市中肺炎で当院に入院した患者(111例·男57例·女54例)を対象に重症度分類,初期治療に使用した抗菌薬,治療経過について検討を行った.結果:平均年齢82.0±7.4歳.高齢前期15%,高齢後期50%,超高齢35%であった.A-DROPスコア0·1·2·3·4·5の各死亡率(%)は0例/3例(0%)·0/23(0)·1/46(2.2)·5/29(17.2)·1/5(20.0)·2/5(40.0),PSIクラスI·II·III·IV·Vのそれは0/0(0)·0/8(0)·0/31(0)·0/47(0)·9/25(36.0)であった.結論:PSIは高齢者市中肺炎患者,特に高齢後期以上の患者においても予後予測性に優れた方法である.一方,A-DROPでは高齢者市中肺炎患者の重症度判定には不十分である可能性がある.A-DROPで重症度を判定する場合は,検査所見や身体所見のみに頼ることなく,うっ血性心不全,脳血管障害,肝障害,腎障害,悪性腫瘍等の基礎疾患を考慮した判定が適当である.

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© 2007 一般社団法人 日本老年医学会
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